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コーヒーがより身近に、愛しく感じる映画。
観終わったあと、おいしいコーヒーが飲みたくなる

わたしたちの暮らしに欠かすことが出来なくなった“コーヒー”。何気ない日常のカップの奥底には、はるかなるコーヒー豆たちの冒険譚が隠されています。本作『A Film About Coffee』は、もの言わぬコーヒーたちの声なき声に耳を傾けた物語ともいえるでしょう。

A FILM ABOUT COFFEE

いま世界のコーヒーカルチャーを牽引する重要なプロフェッショナルたちの熱き仕事ぶりと哲学を描くとともに、ここ数年で拡大を見せる高品質で風味の優れた「スペシャルティコーヒー」にフォーカスします。

カメラは、ルワンダやホンジュラスの生産者の姿を生き生きと捉えながら、仕入れ手と生産者のダイレクト・トレードが行われるようになる以前に彼らの置かれていた実情を浮き彫りに。 作品の中で特に印象的なのは、ホンジュラスの生産者が生まれて初めて自分たちが作った豆で抽出したエスプレッソと、カプチーノを飲むシーン。 初めてのエスプレッソの味に、お互い目と目を合わせて驚き、うれしそうに笑うシーンはダイレクト・トレードにおける最も大きな功績かもしれません。

監督はその当時を振り返ってこう語ります。

「少し大げさかもしれないけど、まさに歴史が書き換えられる瞬間に立ち会えた気がするよ。一度豆を出荷したら、生産者たちは二度とそれを見ることはない。ましてや、そのコーヒーを、ぼくたちが列をなしてまで楽しんでいる光景なんて想像できない。でも彼らはそのとき初めて、世界最高クラスのバリスタによって、自分が育てた豆で淹れられたエスプレッソを味わうことができたんだ」(『WIRED』VOL.12より転載)

ブランドン・ローパー監督

ブランドン・ローパー監督インタビュー

彼らはそのとき初めて、世界最高クラスのバリスタによって、自分が育てた豆で淹れられたエスプレッソを味わうことができたんだ(『WIRED』VOL.12より転載)

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スタンプタウン・コーヒー・ロースターズによる
新たな経済スタイル

そして、サードウェーブの火付け役とも言える「スタンプタウン・コーヒー・ロースターズ」の生豆バイヤー、ダリン・ダニエル氏が、パートナーであるルワンダの生産地で起こした奇跡とも言える、 ある一つの画期的な実例も本作の中に登場します。究極のコーヒ−を追い求めることによって生まれるwin-winな関係性は、今新たな経済スタイルとしても注目されているのです。

A FILM ABOUT COFFEE

グローバル企業が席巻する現代において、個人がどう社会と向き合うか。TPP締結の判断を迫られている日本においても、より真剣に考えていかなくてはいけません。本作は、コーヒーを通じて、「買い物への意識を新たにする」という一つの解決策を紡ぎだしています。

従来の“質より量”のコーヒー業界のカウンターとして生まれたこの新たな潮流は、生産地から、焙煎、抽出に至るまでのSeed to Cup(種からカップまで)を浮き彫りにし、美しい映像で描かれています。 本作は、消費社会によって断絶された"作る人”、“飲む人”を繋ぐ架け橋のような存在とも言えるでしょう。そして観た後、コーヒーがより身近に、より愛しく感じられます。

message from 松下 加奈 (mejiro films)